コラム ― ポーランド・ドイツ、アウシュビッツの旅

中野さなえと子育て、ホット一息

エッシュベーゲであった「つまづきの石」

27日

 カッセルから少し南にエッシュベーゲという小さな町がありました。

 そこには昔ユダヤ人がたくさん住んでいました。でも、ナチに追放され、さらにアウシュビッツに送られたのです。

 今ではユダヤ人は一人もいなくなったということです。

 「つまずきの石」というのは、犠牲になったユダヤ人の名まえ、生年月日と死亡の日など記したプレートを、昔その人が住んでいた家の前の道路に埋め込んだものでした。


 

 金色のプレートに文字が刻まれています。ここで平和にくらしていたんだなあ・・・・。どれほど悔しかったことか。

 現在、50数名のプレートを埋め込んだそうですが、お金を集めながら、集まったたびに勧めなながら、全員分を埋め込む計画だそうです。

 この町のガイドさんが「この石を踏んではいけません。でもつまづかないといけないのです。私たちドイツ人には、責任があります」と言われました。

 私は、戦後70年たっている今でも、こんな小さな町でも、住民が過去と対決して未来をつくろうとしているこの行為に、感動を覚えました。

 以前、中国を訪問した時に、盧溝橋の戦争博物館で、日本の憲法九条が掲げられていたのを発見したときは感動でした。そこには「これが新しい日本の憲法です」と書かれていたのです。

 さらに子どもの教育の基地とされているどこの博物館にも、日本語版の説明書も置いてありました。

 そこには「ここで日本軍が何をしたかしっかり学びなさい。それは未来永劫、日本と中国が仲良くしてゆくためです」とあったのです。

 最近、中国は理屈の合わないことをしているけれども、しかし、博物館の九条の掛物も、説明文も、中国の人の気持ちの真実を言っています。侵略された側が、このような大きな気持ちでいるときに、日本は・・・・!!

 「つまづきの石」は侵略した側の行為です。私は、ここからも私たち日本人が学ばなくてはならないことをかみしめました。

 戦争を起こした国だから、新しい世代も戦争の責任を負うという事ではありません。

 しかし、二度々繰り返さないためには、一人一人が事実としっかり向き合うことが大事です。何も知らずにアジアに出かけるとしたら、本当に恥をかくばかりだと思いますし、真の友好は築けるはずがありません。

 小さなプレートが、私たちに「平和」を語りかけていましたね。

       (2015年5月28日  記)

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